鈴木大地、必然のサヨナラ打

9日のオリックス戦で劇的なサヨナラ勝利を飾ったロッテ。延長戦を制したのは、折れない心で自らを奮い立たせてきたチームリーダーの一打だった。


 それは必然だったのかもしれない。2点差の9回裏、4番・角中が3号同点2ランを放ち、延長に突入。迎えた10回、1死満塁でこの日、2回に先制適時打を放っていた6番・鈴木に打席が回ってきた。

「絶対に回ってくると思っていたので、準備はできていました」

 集中力を高めて迎えたその打席。オリックス4番手・近藤の初球、146キロの直球を迷いなく振り抜き、右前サヨナラ適時打を放って見せた。

鈴木の置かれる環境は今年、大きく変わっている。守備位置こそ変わりながらも3年連続全試合出場を果たしていたチームリーダーは今年、本塁打が見込めるレアードが加入したことで、三塁以外のポジションを模索することに。「最後の最後まで、スタート(スタメン)で出ることは諦めていない」と、オープン戦では慣れない守備位置や途中出場など、限られた出場機会でアピールを続けてきたが、その名前は開幕オーダーにはなく、開幕戦は出場機会も訪れなかった。

「悔しくないかと言われればもちろん悔しい」。出場のなかった開幕戦について、正直に気持ちを口にした鈴木。ただ、井口監督からは「チームの核になる選手。必ずレギュラーに戻る日がある」と開幕前に伝えられたいたという。

「代打の一番手で考えていると言ってもらいましたし、もう一度(レギュラーを)取り返すつもりでやってほしいとも(言われていました)。そう話してもらえて感謝の気持ちもありますし、僕自身、全然気持ちが落ちていなかった」

 指揮官の言葉を胸に、ベンチメンバーとして、日々チームのために準備をしてきた。

そんな中、昨年4番を務めた一塁・井上晴哉の不調もあって、4日の西武戦では「6番・一塁」として、鈴木がスタメンに名を連ねた。

「(一塁でのスタメンは)今までの自分じゃ考えられないですね」と語る鈴木だが、「それでも試合がすごく楽しいですし、(出場できることは)嬉しいです。今も一生懸命やるだけです」とも明かす。この日のお立ち台で語っていた「今できることを100%毎日やる」を実践し続け、サヨナラ打を呼び込んだ。

「いつか絶対にチャンスは来る。その時に『待ってました!』っていう準備をしておこうと取り組んできました」と、オープン戦から前向きな姿勢を貫き続けた背番号7。お立ち台では「選手、スタッフ、監督コーチもそうですが、すごく声をかけてくれて、ありがたみをすごく感じましたし、本当にファンの方の声援も感じたので、それもあって心は折れなかったです。まずはこういう目に見える形で、チームに貢献できてすごく嬉しいです」と周囲の支えを力に変え、それを結果として出せたことを喜んだ。

 鈴木に始まり、鈴木に終わったこの一戦。先制適時打とサヨナラ打、2つの適時打を放ち「目に見える形」でチームに貢献した鈴木だが、実はもう一つ「自身のやれること」を遂行できた打席があった。それが9回、同点に追いついた直後、無死一塁で決めた送りバント。実は5日のソフトバンク戦でも同様の場面があった。

 延長10回に角中が勝ち越し3ランを放った直後、レアードが左安打で出塁。続く鈴木は送りバントを試みるも捕邪飛となり、走者を進めることができなかった。しかし、今回はしっかり走者を進めることができた。

「福岡で大事なところでミスしてしまったので、その後でああやって決められたことも大きかったです。確かに得点にはつながりませんでしたが、本当にこれからに活きる1打席、犠打でした」

 安打を打つだけではない部分で、チームのために仕事ができたこの場面を、納得の表情で振り返った。

「今日は美味しいところを僕が取っただけ。角さんが追いついたのもそうですし、リリーフ陣が抑えたのもそう。チームで獲った1勝だと思っています」

 お立ち台では「本当の4番が帰ってきても、試合に出られるように頑張ります!」とアピールしたチームリーダーは、会見を終えると愛用のバット2本を携えて、室内練習場へと歩いていった。

折れなかった心―ロッテ鈴木、“必然”のサヨナラ打「チームで獲った1勝」

言葉はいらない

悔しい気持ち、試合に出れる喜び、一度失敗してしまった送りバント、チームへの貢献。さすが鈴木大地の一言で片付けられないほど色々な思いが交錯している。そして何より室内練習場へ足を運び、誰よりも全力で誰よりも遅くまでバットを振り続けるのである

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